「らしくならないために」

牧口誠司

 今から20数年前、教師になりたての頃、学校と家との往復では、あっという間に「らしく」なってしまうという予感がありました。学校でしか通用しない常識、教師らしいものの見方といったものがすぐに身についてしまうだろうという気がして、どうすればそれが防げるだろうかと考えました。それには外との回路が必要で、僕を「先生」と呼ばない人たちとの出会いと関係を大事にしようと思いました。結果的には、教師である僕にとっても大きな意味のある出会いが多く、例えば今回のアフターツアーも、そんな出会いのいくつかが生んだものだと言えるでしょう。
 ただし、「らしく」なる危険があるのはどんな職業でもそうらしく、新聞記者、弁護士、裁判官などの友人に聞くと、同業者とばかり接しているとどうしても視野が狭くなるらしいですね。判決文を読んだことのある人ならすぐ分かると思いますが、あれが読みにくいのは、司法関係という「業界」にしか通じない方言を使っても、誰も疑問に思わないからですね。そうそう、話はちょっとそれますが、今年、京都のF先生は、国語の授業で「判決文を分かりやすく書きなおしてみよう」という、大変優れた公開授業をされていました。ゲストで来ていた弁護士・裁判官・検事が、高校生のダメ出しにかなりショックを受けていたのがおかしかったのですが。
 そしてもう一つ、日頃すべきだと思っていることは、教養を増やしていくべきだということです。毎週日曜日の全国紙の書評をチェックして、図書館に入れてほしいものは司書の先生にお願いし、自分用のものはアマゾンで購入することにしています。ただ、見ない録画がどんどん溜まっていくように、買ったはいいけど読まない本もどんどん溜まっていくんですよねぇ・・・。
 さらに、週一本映画館で封切映画を観るのも昨年からの目標にしています。今年は、北海道と沖縄にそれぞれ遊びに行った3月以外はノルマ(?)を達成していまして、特に2月はいい映画が多く12本も観てきました。今年のお薦めは「アバター」、「インビクタス」、「カティンの森」、「海角7号」、「愛のむきだし」です。次回は、この中からいくつかご紹介しましょう。きっと、観たくなると思いますよ。