ハワード・ジンが死んだ

                東京高生研 上條

 新聞の片隅の死亡記事欄に、ハワード・ジンが1月27日に87歳で亡くなったことが載った。彼の名は前から耳にしていたのだが、強く印象づけられたのは映画「グッドウイルハンティング」。マット・デイモン扮する肉体労働をしている青年が、酒場でエリート大学生を相手にやり合い、「お前のいってるのは誰それの教科書に書いてあることの丸暗記だろ、あんなものよりハワード・ジンの民衆のアメリカ史を読んだ方が良いぜ。」(といったと思う、記憶が確かとは言えないけど)と啖呵を切るところ。

 「民衆のためのアメリカ史」は気になっていたけどなかなか本屋で見つからなくて去年やっと買った。上下、上巻だけで8000円、650頁。これの少年版の「学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史」も出ていてyou tube で見ると
マット・デイモンは10歳のときにこれを読んだとのこと。

 まだ読んでいる途中だが特に面白いのは南北戦争のところ。リンカーンは決して奴隷解放論者ではなかった。演説を見ると、ときと場所によって奴隷解放になったり奴隷制維持になったりまるで鳩山民主党政権かという状況。それを奴隷解放に踏み切らせたのは闘い続ける不屈の民衆の圧力であることが示されている。奴隷の問題とは異なるところで始まった南北の争いが、奴隷解放に踏み切ることで北が多くの黒人兵士を得て、南が黒人奴隷の離反に苦しんだことで北の勝利がもたらされる。改めて現在の日本の状況を考えさせられるところだ。

 ハワード・ジンは、この本を「民衆・市民が歴史を取り戻す」ために無名の民衆の声を多く集めて作っている。彼がアメリカで行われている歴史教育を強く意識し、それに反対し、真実の歴史を取り戻そうとしてこの本を書いたのは、あとがきからも明らかである。高校教育に携わる私たちは今、何を問題にし、何をすべきか、考えさせられる。高生研で、北海道大会で、いろんな議論がされるといいなあ。北海道大会ブログだけどまあ自由に書いていいよね。