「早春の北海道に行ってきましたぁ!」 第7話

夢の中、牧口さんと佐藤さんは牧場を見学しに行った。僕もついていこうとしたが、睡魔に負ける。しばらくして起きて外に出ると、建物の周りの水たまりには氷が張っていて、それを1枚1枚足で割っていったが、考えてみると、そんなことをするのはたぶん小学生のとき以来だった。なにせ、近頃大阪では、水たまりも氷もなくなってしまったのだから。
牧場では、朝ごはんもカレイの煮つけが1匹づつ、食後のコーヒーまでついて至れり尽くせり。が、食べ終わるとすぐ、慌ただしくお暇して、とかち帯広空港をめざす。佐藤さんが子どもを迎えに、いまから羽田経由で松山まで飛ぶからだ。これで厚かましい人間が一人減ったかと思ったら、牧口さんが厚かましく、車で新得まで送ってくれと言う。気のいいN先生は「いいですよ」と引き受けてくれたが…。
着いたところは閑静な住宅地の一角に建つログハウス。

そこが、牧口さんの「夢がいっぱい牧場」時代の先輩、Tさんのお住まいだった。お庭に車を止めてTさん御夫婦と3軒ほど先の「スロウinn楓」にお邪魔した。こちらもログハウスで、まだ新しい木の匂いが残っている。そこでは、Eさん夫婦と2歳になる慧君が出迎えてくれた。夏の後泊ツアーの下見で、一通り施設を案内していただいたあと、コーヒールーム通された。その部屋の窓からの眺め!これは僕の筆力では到底書けない。あえて陳腐な表現をするならば「日本にもこんな景観があったのか!?」だろうか?これはぜひとも実際に行って眺めてほしい。で、その窓の前にはカウンターがあって、点てたての珈琲をその景色を眺めながら頂く。至福の時間、これだけでここにきた甲斐があったと思ったのだが、さらに素敵なことが待っていた。ここのご主人はフライフィッシングが趣味なのだ。で、手巻きのフライを見せていただいたり、イトウ釣りの話を聞かせていただく。釣り、とくにフライをする僕にとっては、こちらも大変充実した時間であった。
N先生はようやく魔の手から解放され、われわれはTさんの車で新得駅近くの蕎麦屋に連れて行っていただく。北海道で麺というと、“ラーメン”のイメージが強かったが北海道の“蕎麦”は侮れない。牧口さんはこんばんTさん宅に泊まるので、蕎麦を食した後は中村さんと二人、新得駅に向かった。列車を待つ駅の待合室で俯きながら二人は同じことを考えていた(はずだ)。また、非日常から日常に戻る時が近づいてきているのだ。
それにしても、今回の旅では大変多くの方にお世話になった。牧口さんの同僚Iさん。北海道高生研のみなさん。とくに遅くまで付き合って下さった井上君・松村先生。札幌まで送っていただいた南先生。安達尚男さん・俊子さんはじめビバハウスの方々。帯広のN先生。「夢がいっぱい牧場」のご家族のみなさん。新得のTさん御夫妻にEさん一家。みなさん、ほんとうにありがとうございました。心より感謝申し上げ、この旅の長い報告を終わります。そして、ご愛読いただいたみなさん、ありがとうございました!