【ドクター牧口の、「映画館で会いましょう!」その2】

映画<海角7号/台北に舞う雪>

 台湾を舞台にした映画を2本続けて観て、どちらも心に残る良作だったのでご紹介します。

 「海角7号」は現在の台湾のある街での出来事に、日本の統治が終わった直後の二人の男女の物語が絡み合って進んでいきます。台北でミュージシャンになる夢に破れた主人公が、故郷の小さな町で郵便配達を始めますが、今はすでにない日本統治時代の住所が書かれた小包が送られてきます。それを開けてしまった主人公は、台湾から日本へ引き揚げる船の中で、日本人の男性が恋人の台湾人女性に宛てた、けれどその当時は送ることが出来なかった7通の手紙が入っていることを知ります。しかし、当時の住所を知る人もなく、主人公はその小包を届けることができません。
 そんな時、彼は日本人歌手の中孝介を招いて開かれる町興しライブの前座バンドのメンバーに選ばれます。しかし他のメンバーは即席の寄せ集め、日本人スタッフの友子とも衝突ばかりしています。バンドは成功するのか、そして小包の宛先の女性はまだ生きていて届けられるのか・・・。台湾では2008年の大ヒットで社会現象になったほどなんだそうです。

 もう1本の「台北に舞う雪」は、台北で活躍していた新人歌手と、小さな町の何でも屋の青年とのラブストーリーです。新作発表前に突然声が出なくなり、台北から姿を消した歌手のメイは、山あいの小さな町にたどり着きます。お酒を飲み過ぎてつぶれてしまったメイを旅館に届けてやったのは、身寄りがなく、町の人たちに育てられたモウ。彼は声の出ないメイのために仕事や部屋を探してやり、いろいろと世話をするうちにメイに恋心を抱くようになっていきます。しかしメイは、台北にいるプロデューサーのレイに思いを寄せています。
 町でバイトをしながら暮らすメイを、芸能記者が嗅ぎつけて取材にやってきます。やがて声が出るようになったメイは新年のお祭の日に素晴らしい歌声を披露し、記者からメイの居場所を教えられたレイもその歌声に耳を傾けています。レイと共に台北に帰って行くメイ。思いを伝えられないモウ。モウはその時、自分を置いていった母親が、「雪が降ったら願いがかなう」と言っていたことを思い出します。もちろん、台湾には雪は降りません。つまり、母親はモウに願いをあきらめさせるためにそんな事を言ったのだと気がつくのです。(今回も、雪は振らなかった…)そう感じたモウの前で火事が起こり、知り合いのお爺さんを間一髪で助け出すモウ。消防車の消火液をかぶるモウは、けれどその泡がまるで雪のように見えることに気がつくのです。そして・・・。

 どちらも、優しく切ない気持になる素敵な映画です。台湾の小さな町が、まるで日本の昔の風景のようで、懐かしく感じる方も多いのではないでしょうか。出来れば好きな人と一緒にご覧になることをお勧めします。