蕾の花が開く

 調理学校へ進学したいと思っていたAが「家の経済的な理由で就職にします」と言いました。「そうなの。大変なのね」と信じられないような表情をされたので、先生にはわかってもらえないんだなと思ったそうです。でも「いい先生なんだけど」とも言いました。
 諸事情で服の洗濯もせず、髪も不潔で、歯も磨かないBが実習の時間にひとりで作業することになりました。同じグループの生徒たちが先生に訴えたからです。実習の先生は担任に伝えたけれどもう動けません。担任もクラスで「くさい」と生徒たちから訴えがあり、被害を分散するための席替えをしたり、入浴し洗濯するように「優しく」指導してきたのです。
 生徒の置かれた状況を想像したうえで言葉がかけられない。だから何も聴けない。送っているメッセージは「あなたの家庭の問題だから」ということです。
 みなさんなら、こんなときどんな言葉で応答し、どんな対応を考え、誰に相談しますか。

 Bは苦しかった実習の後部活動に行くと、顧問の先生が「何かあったの」と聞きました。「みんなが私のことをゴミみたいな目でみるの」「その理由はあなたにもあるのよね。いっしょに洗濯しましょう」。こうしていくつもある校舎のうちで一番ひと気のない校舎の3階トイレで洗濯指導がはじまりました。その先生が担任に相談するとちょっと驚き「家でやることだから」と言いましたが、先生はそうっと洗濯指導を続けます。Bは家から洗濯ものを持ってきて、先生の支援を得ながら話ながら手洗いの洗濯を続けます。
 私もBのにおいはずっと気になっていました。だからあるとき「養護教諭のちからも借りて対応を考えませんか」と担任に話しました。そうして複数の先生で相談した後で、たまたま顧問の先生から洗濯指導の話を聞くことができたのです。以後、この顧問の先生も含めてBについての連絡会を開いています。その情報交換のなかで先に書いたようなことがわかってきたのです。
?立ち止まって「困っている生徒」のことを考える
?生徒の事実を共有する
これが私が特別支援教育の校内研修会で掲げた課題です。
これに?指導方針をたてる?生徒どうしのかかわりを育てることを視野に入れる?育つとか育てるとかがどういうことなのかも集団で振り返りつつ実践をすすめる
 ???が加わったら生活指導実践です。生活指導実践は「教師が指導するのではなく、教師が生徒たちと共々につくり出す生活が指導する」のです。
 このような実践が報告され、討論される札幌大会に期待してください。

 大会の準備をすすめてきた実行委員のみなさん、ほんとうにありがとうございました。あとは十分に膨らんだ蕾の花が開くだけです。 
 この応援ブログを管理してくださった安藤さんにも心より感謝いたします。