札幌大会ここが見どころ・聞きどころ−庄井良信講演(1)−  現地より

川原茂雄
先日、札幌大会で講演を担当される北海道教育大学札幌校の庄井良信先生の研究室に、講演の打ち合わせをかねて、お話を伺いに行ってきました。札幌で開催される全国大会での講演の講師を、是非とも北海道から誰か紹介してほしいと依頼された時に、まっさきに名前が思い浮かんだのが庄井先生なのでした。
 庄井良信先生のご専門は「臨床教育学」ですが、大学院時代には宮坂哲文氏や小川太郎氏の生活指導に関する論文を読んでいたり、研究者としてのスタートを切った広島女子大時代には全生研の先生方との交流があったりと、以前から「生活指導運動」への関心と問題意識を持っていたそうです。
 しかし、なにより私が庄井先生を講師として推した最大の理由ときっかけは、昨年の高生研大阪大会での基調発題である「<弱さ>で支え合う関係を学校に」の中で紹介されていた大瀬敏昭氏の以下のことばでした。
 「これまでの健康に立脚した強さを求めるの学校でなく、弱さを自覚した子どもたちと自分の無力さを自覚した教師とがケアと癒しを含みこんだ応答的な営みをおこなう場として、さらにはその応答的な営みを通して子どもたちとともに生きると同時に大人も育つ場として学校を再構築することである」
 これは庄井良信先生の著書である『自分の弱さをいとおしむ−臨床教育学へのいざない−』(高文研刊・2004)の中で述べられていること、ほとんど同じ響きをもつことばではないのかと驚かされました。そして、それが高生研の基調発題で中心的なテーマとして取り上げられていることも二重の驚きでした。私自身にとって、高生研とは現代の高校教育の困難な状況に鋭い理論と緻密な実践で切り込んでいく<強い>教師たちの研究団体というイメージがあったからです。
 <弱さ>を基調のテーマとする現在の高生研ならば、同じく<弱さ>をテーマとした「臨床教育学」の構築に取り組んでいる庄井先生のことばでも響きあうのではないのだろうか。そんなことを直感的に思ったのでした。
 じつは庄井先生の講演は、北海道だけでなく全国の学校教育および学童保育などの対人援助関係者の間では非常に人気が高く、これまで私自身何度か先生に組合や民教関係での講演をお願いしましたが、お忙しい先生のスケジュールの中で日程を確保することはなかなか難しいものがありました。
 今回、上記のような私自身の直感や思いを含めて是非とも札幌大会で先生のお話を高生研の先生方にしていただきたいとお願いをしたところ、即答でご承諾をいただくことができました。先生ご自身の言葉によると、この講演を引き受けたことを機会に、大学院生時代からの研究生活の中でずっと関心と問題意識を持ち続けてきた「生活指導運動」と、もう一度つながり直したいという思いがあるとのことでした。
 はからずも、庄井先生ご自身からも「つながり直し」という言葉が出てきたことに、私自身大変驚かされるとともに、この講演が必ずや高生研自身にとっても大きな「学び直し」の機会となることを確信しました。ちょと長くなりましたので今回はここまでで、次回は庄井良信先生の<弱さ>の臨床教育学と<ケア>の思想について、もうすこしご紹介したいと思います。